イツワリノ恋人

「知るか、俺だってわかんねー…」

どこか、哀愁をひめたように呟かれたそれ。
瑠衣の顔が、どこか暗い影を落としているような気がしたのは、気のせいだったのか。

「もう、行けよ」
「…っ」

今にも泣きそうにゆがんだ顔をした瀬戸さんは、踵を返し、走り去っていった。

それを確認した瑠衣がこちらに歩み寄ってくる。

触れられる…っ!
身体がびくっと反応した。
一瞬瑠衣の手も止まったけど、すぐに何かかけられた。
制服…上着?

「…服直せ。目のやり場に困る」
「へ…」

自分を見ると、スカートはぎりぎりのところまでめくれ上がり、大きくはだけた胸元からは…。

「っ!」

かっと頬が紅潮する。

…後ろを向いていてくれて助かった。

「すまない…助かった」
「知ってて行かなかったら…あいつらと、同じだろ」
「…ん」

なあ、瑠衣。

今までのオヒメサマとは違うとか。

なんかよくわからなかったけど。

ちょっとだけ、瑠衣なら信じてみてもいいと思ったんだ。

たぶん、この時にはもう、少しずつ、ゆっくり。

瑠衣に、恋してた。