イツワリノ恋人

麗side


~♪~♪

電話…?

鞄に入っていたケータイに手は届かず、瀬戸さんが着信をチェックする。

「…瑠衣からだ」

その瞬間、殺気のこもった視線が向けられる。

「切っちゃおうか、電源」
「なッ…」

「はいはい、麗ちゃんはこっちに集中しようねー」

瀬戸さんたちのほうを向いていた顔を向き直される。
シャツのボタンに手をかけられる。

「……ぅあ…」

恐怖でガタガタと身体が震えだす。

もうだめか。
ぎゅっと目をつぶったとき。

「…何してんだよ」

聞き覚えのある、低い、怒気をはらんだ声が聞こえた。

「瑠衣…っ!」

怯えたように、瀬戸さんが声を上げる。

男子たちは、神埼グループのことを知っていたのか、それとも見知らぬ誰かに見られたことに今更恐れをなしたのか、逃げ出そうとした。

「待てよ…っ!」
「うわぁっ!?」

一人が、瑠衣につかまった。

「何してたんだよこいつに…」

振り上げられた拳が男子の顔面めがけて振り下ろされる。

ーまずい。

「やめろっ!」

寸でのところで拳が止まる。
どこか驚いたような、釈然としないような複雑な表情を浮かべた顔が振り返る。

「…殴るな」

「あ、の…っ、瑠衣…っ!」

青ざめた顔でじりじりと後ずさる瀬戸さんに、瑠衣は詰めよっていく。

「ひっ…」
「何でこんなことした?今回のは…やりすぎだっていうのは、わかるな?」
「だ、って、」
「あ?」
「瑠衣がわるいのよ?私たちとは話そうとしないくせに、いままでのオヒメサマは皆同じような扱いだったのに…」
「…」

黙って、瀬戸さんの話に耳を傾け続ける。

「なのに、その子は心配するみたいに声かけて…っ、瑠衣、いままで呼び出された子のところに来たことがあった?ないでしょ?なのに、何でこの子だけ…っ」