私は2-B、悠太は2-Cへ滑り込む。

「セーフッ」

何とかギリギリ着席時間までに間に合った。

私は顔だけ廊下に出し「じゃあ悠太、お疲れ!」と言って教室に入った。


「おっはよ~」

席に着くと同時に、クルッと前の席の佐野 瑠璃(さの るり)が振り返る。

「今日もお熱いことで。」

瑠璃はわざとらしく下敷きで仰ぐ。

私は「えー何言ってんの?」と言うものの「顔に出てます。」と、瑠璃にピシャリととどめを刺されてしまった。


「ほんっと、陽彩と悠太くん仲良いんだから。」

私は瑠璃のその言葉に何も返さず、ただ笑うだけだった。


この言葉、瑠璃に何百回と言われてきたが、未だに嬉しかったりする。

気を抜いてしまえば、きっと私はニヤニヤした顔になるだけだ。


「あれ、瑠璃、髪切った?」

「あ、うん。昨日ね。ちょっと鬱陶しくて。」

肩の下くらいのギリギリ縛らなくてもいい長さだった瑠璃の髪が、少しだけ短くなっていた。


「陽彩みたいなボブにしようかと思ったんだけど…私あんまりショートカット似合わないからさ。」

「えー、瑠璃ならどんな髪型も似合うよ~!」

「お世辞をどうも。」

「お世辞なんかじゃないってば。」


クリっとした瞳に、綺麗な形の唇。整った鼻。

モデル並みの可愛さの瑠璃。


私も瑠璃みたいな可愛さがあればな~と思うものの、その前にもう少しおしとやかにならないとダメか、と肩を落とした。


そんな私を見て「陽彩、朝からなんか面白い。」とクスクス笑った。