私、岩崎 陽彩(いわさき ひいろ)はこうやって、幼なじみの村山 悠太(むらやま ゆうた)をほぼ毎日起こしに来ている。

我ながら、なんていい幼なじみなんだと感心してしまう。

悠太め、この仮はもはや返しきれないほどの量なんだからね。

そんなことを思いながら、悠太の部屋を見渡す。


相変わらず机の上の景色がここ数日で何も変わっていない。

ノートとプリントが散らかった汚い机。


こりゃ昨日もそのまま帰って来てから寝たコースだな。

いくら部活で疲れているからとは言え、課題も何もやって形跡が無し。

こんなんで大丈夫なのかな~?


私がうーん、と首を傾げていると「陽彩ーっ行くぞーっ!」と下から声がした。

「あ、うん!」

私は悠太の荷物も持って下へ降りていく。


外へ出て悠太がギロッと軽く私を睨む。

「お前、チャリは?」

「え、ないよ。」

「は?遅刻しそうなのに、2ケツかよ!」

「だって、暑いし、汗かくし。」

「お前なぁ…おまわりさんに捕まるぞ?」

「大丈夫、大丈夫~!」

「ったく…門の前からは走れよ?」

「分かってるって~」


私はにんまり笑って、悠太の後ろに座る。

フラフラと揺れ出す自転車が、軌道に乗り安定をし始める。


「頑張れ頑張れ~」

「っるせぇ。」

終始立ち漕ぎの悠太。

そんな悠太の背中を見て、あ、また悠太の背中大きくなったな、と思う。


そして憎まれ口を叩きながらも、「落ちんなよー」なんて心配してくれちゃったりもする。


そう、悠太はなんだかんだ言って、優しい。


私はクスッと笑って、「行け行け~!」と陽気になって、空に向かって言った。