「店長、なんで私はここにいるんですか?」
「それはお前、人手が足りない年末に実家に帰らないで居残ってるお前が悪いだろ。」
「え、あたしのせいなんっすか?何それ初耳。」
「むしろ家で一人寂しく年越しするであろうお前を引き取ってやった俺に感謝しろ。」
「引き取るって何すか。あたしだって一緒に過ごしてくれるやつくらい…」
「いるのか?」
「…みんな実家に帰りましたとも。」
「だろ?俺ってやっさしー。」
「感謝なんかしませんよ。むしろ恨みます。紅白見れないじゃないですか。」
「お前どうせ演歌になったらチャンネル変える人種だろ。そんな甘い気持ちで紅白見んなよ。紅白も迷惑してるぞ。」
「紅白ってそんな気合い入れて見る番組だったんすね。何それ初耳。」
「何でもいいけどしっかり働かないと給料払わねえぞ。」
「大みそかに働く健気なアルバイトになんたる仕打ち!」
「うるせぇ。俺は働かざる者食うべからずっていうスタンスでやってんだよ。」
「店長ちょっと使い方間違ってるよそれたぶん。」
「お前に日本語を正されることほど屈辱的なことはないな。よしお前今日ラストの片づけまでしっかり働けよ。」
「…職権乱用!汚い大人!」
「お前ももう大人だろ。汚い大人の仲間入りだな。」
「あたしは汚くなんてないわ!こんな健気なのに!!」
「自分で健気って言うほど胡散臭いものはねぇ。」
「…店長、もうやめましょう。なにいい大人が大晦日にこんなくだらないことで体力消耗させてんすか。」
「そうだな。仕事でも体力使うんだからこんなとこで俺に無駄な体力使わせんじゃねぇよお前。バカか。」
「あれいつの間にあたしが悪者になったんだ。不思議体験だよ店長。」