「店長のパパさんにもちゃんと渡しに行きたかったな。」


帰りの電車でポツリと一言。

今回は急に決まったことだったから、店長のお父さんは都合が合わなかったのだ。


「いいのいいの。あんなふざけた親父のために気ぃ使わなくて。

それに母の日にも父の日は無視していいからってお袋も言ってたし。」



「そういう訳にもいかんでしょうが。
パパさんもきっと店長からのプレゼントを待ってると思いますよ。」



「いや、あのアホ親父は俺のじゃなくてお前が来るのを待ってるだろうよ。

そんでお袋にうざがられるんだろうな。」


「パパさんもなかなかいいキャラしてますからね。ママさんも大変だ。」



実は前に店長の実家にご挨拶に行ったのだが、もうすごい家族だった。



まず顔が美しい。

そしてママさんが鬼畜だった。女王様だった。
パパさんは…どことなくあたしと同じ匂いを感じた。



鬼畜な店長とママさんが集まると、あたしとパパさんでは太刀打ちできないが、それもまた面白いのだ。




「なんだかパパさんたちに会いたくなってきた。」


「じゃあ来週にでも行くか?」


「え、マジですか!」


「お前が行きたいって言うんだからしょうがなくだけど行ってやるよ。」



「店長マジで優しい!マジ神!」


「お前な、社会人にもなってマジ神とか言ってんなよ。馬鹿みたいだぞ。」


「馬鹿なのは否めませんがさすがに恥ずかしいので自重します。」


「お前に自重という概念が存在したのか。」


「店長、それ普通に失礼。」


「知ってて言ってるからな。」


「店長の馬鹿。」


「馬鹿なのはお前だろ。」


「アホ。」


「アホなのは親父だから。」

「鬼畜。」


「これで鬼畜とか言ってたらお袋に勝てないぞ。」


「ママさんに勝つ気なんて最初からありませんーだ。店長には負けませんけどね。」


「雇用主相手によくそんなことが言えるな。」


「ここで雇用の話を出してくるのはズルですよ!そうやって偉い人は下っ端を手のひらで転がすのよ!」


「お前は雇用とか関係なしに勝手に転がってるだろうが。人のせいにすんなよな。」


「いつかあたしが店長のこと転がしてやりますからね。覚悟しておくがいい!」


「50年後とかか?」


「もうおばあちゃんじゃないすか。そんな歳まで転がされ続けるとなるともう転がるプロになってるでしょうね。」


「お前ならプロも目指せるよ。素質ある素質ある。」


「プロ目指して頑張ります!」


「…お前ってやつは本当に馬鹿だなぁ。」


「ご存知でしょうが!」




これから先も特に馬鹿が治る予定はないので、このまま我慢してくださいね。




end