「返事は?」
「はい?」
「いやそうじゃなくて」
「あ、えと、うれしい、です」
「じゃ、俺と付き合う?」
「う、えっと、」
「ま、あいつのこと振ったって聞いて、今言うのはセコイよな。別に焦ってねーから、ゆっくり考えろよ」
そう言って、トナカイ角のついた頭をぐしゃぐしゃにされた。
「これ邪魔だな」
「店長がつけたくせに」
トナカイ角をぺーいと外され、さらにぐしゃぐしゃに。
店長の手だと思うと、何の抵抗も生まれないのは、店長だからなんだろうな。
怖いことなんか何もないって無意識に思うのかなんなのか。
安心できる手なんだよ、この大きな手は。
「店長」
「なんだよ」
「あたし、店長の傍だと安心するんです」
「ふーん?」
「それに、店長といるとうれしいんです」
「そりゃよかったな」
あいつといた時、あたしの感情のすべては“楽しい”だった。
楽しくて、居心地がいいのがあいつの隣。
ずっとこのまま“楽しい”を続けたいって思った。
好きだって思った。
店長の隣は安心する。
店長が構ってくれるのがうれしい。
構ってくれないと寂しい。
今まで意識したことなんてなかったけど、これも好きって感情だ。
「いつの間に…」
「は?何が?」
いつの間に、好きになっていたんだろう。
自覚した途端に店長への感情が溢れてくるのが不思議。
あたしの中に、店長との思い出がこんなにいっぱいあるなんて。
こんなに、好きになっていたなんて。

