乾杯と言ってからには飲まなければと、ひとくち口にふくみ、飲み込む。
ダメだ、味わかんない。
全然落ち着かないよ。
「店長店長店長店長!」
「なんだようっせーな。なにお前、店長としか言えなくなったわけ?」
「や、違いますけど、え、今のなんですか?!」
「なにってなんだよ?」
「だって、好き、とか…」
「なに、もう一回言えっつーの?」
「え、や、その…」
「好き、お前のこと」
真面目な目に射抜かれて、昼間のあいつの言葉が頭によぎった。
『お前さ、店長さんのこと好きだろ』
その時はそんなことないって言ったんだ。
でも、今おそらく顔が真っ赤になって、心臓が破裂しそうに動いてて、体が燃えるように熱い。
思わず顔を手で覆って隠した。
だってなんかすごく嬉しい。
「隠れんなコラ」
「だってだって、だってー!」
「だってなんだよ馬鹿」
指の隙間から見た店長はなんだか嬉しそうに笑っていて、それだけで嬉しく鳴る心臓はどうしたらいいんだろう。
「あ、のぞいてんじゃねーよ」
指の隙間の視線に気づかれ、手を引っ剥がされる。
「見るならちゃんと見ろ。んで、ちゃんと見せろ」
ぎゅって手を掴まれても、何の抵抗感もないのはなんでなんだろう。

