「はぁーあ…なんでもっと早く気付けなかったんだろ」


「…ん?何の話?」


「いや、オレがお前のこと意識したのってさ、………電話、なってんぞ」



ため息と共にテーブルに突っ伏したイケメンくんが、テーブルに置いたあたしの携帯の振動をダイレクトに感じたらしく、顔を上げて言った。



「…店長からだ」


「……こりゃまたなんてタイミングだよ。どっかで見てんじゃねーだろーなあの人」



イケメンが顔を上げてキョロキョロ周りを見渡すが、もちろんその視界に店長を捉えることはない。

てかいたらビビる。



「いるわけないでしょ。ちょっと出るね」


一言断りを入れて、“応答”をタップすると、店長の疲れ切った声が耳にダイレクトに響く。



「もしもし?お前今どこで何してる?」


「喫茶店でお茶してます」


「あー…もしかしてデート中?てかお前、なんか鼻声じゃね?」


「…デート中じゃないですし、鼻声なのは電話越しだからじゃないですか?」



なんでこれだけの情報でそんなことに気づくんだよ店長の馬鹿。

そっとしておいてくれてもいいじゃないか。