家を出ようと思って、すぐに最低限の荷物をまとめて
得意の裏口からでた。
もちろん気づかれない。

自転車に荷物をのせて図書館へと向かった。
図書館の入り口近くに、彼がうなだれているように
壁におっかかっていた。
『どうしたっ?』
息を切らせて、彼に近づくと
彼は、あたしをキッと睨み付ける。
「・・・これ誰だよ」
このときのあたしは、付き合うということをただの暇つぶしとしか思っていなかった。
小さい頃から両親が共働きだったこともあって、甘えさせてくれる人
を探していたのかもしれない。
何も言えず黙っているあたしを見て
「・・・俺も遊びだったわけ」
いつもより低い声が、あたしの心臓をバクバクさせる。
『そうゆうわけ・・・じゃない』
二人の間に変な空気が流れる。
気が付いたら、あたしは彼の手から携帯を奪って走り出していた。


最寄り駅に向かっている途中こんなことを考えながら自転車を漕ぐ。
これから一人っきりかぁ・・・・。
また体売らなきゃなのかなー。
不安でいっぱいだった一方、どこか冷静な自分がいた。


最寄り駅に着いて、都市部へ行く電車を待つ。
あたしが住んでいたところは、かなりの田舎で電車も2時間に一本とか
2時間待ってもこない日もあった。
時刻表を見ると1時間後にちょうど電車があった。
1時間暇だなぁー。とか考えていると
後ろから
「美奈!!!!」
けして名前を呼ぶような言い方じゃない。
怒鳴るような呼び方であたしの名前を呼ぶ人物がいた。
もしかして、親・・・?
そう思ったら、静かだった心臓がバクバクいいだした。
手もかすかに震え始める。
恐る恐る振り返るとそこには、腕を真っ赤にそめた彼がいた。