『あいつっ!!せっかく俺が告ってやったの
 に、フルとかマジありえねぇー!!
 少し可愛いからって、調子こいてんじゃね
 ぇーぞ!!! 』

鷹旻…君…?

さっきまでの嬉しさは消えていき、血の気が
サァー、と引いた。

もしかして、私を好きだからじゃなく、見た
目で判断したっていうの?


なぜだか、急に怖くなって私はその場から、
逃げる様に立ち去った。




















それからというもの、みんな自分の外見しか
見ていないような気がして、
告白してくる人に
“どうして?”“何処が?”と聞くようにな
ってしまった。


今回の人もそう。
顔しか見ない。誰も中を見ない。

私は、

   《告白される事に悩んでいる》


なんて事言ったら、みんなに嫌われるかもし
れない。
でも、告白してくる奴が、みんなイケメンな
どではない。それに、「ごめんなさい」と、
言って諦めてくれる人もいれば、何度も付き
まとって来る人もいる。



 今回のは、中でも災厄なヤツだった。





「ダメだよ…」
「へっ!!?」

私は下げていた頭を上に上げ聞き返した。

「えっと…どうゆうい「ダメだ!!!!」


聞き返そうとしらダメだなんて…

ますます顔を歪めていると、橘君は、いきな
り私の肩をガシッと掴んできた。

「キャッ!!」

びくりして、目を閉じると開けた時にはもう
橘君の顔が、もう目の前にあった。


「やめっ!…い…やっ!…」

「ねぇ…僕と付き合ってよ…」

「んっ!!」

橘君の低い声が耳元で響くたび、ビクンッと
してしまう。

橘君は耳元から、顔を移動させ首筋を軽く
噛んだ。

「ひゃあ!!」

首筋をあまがみされて、力が抜けて立てなく
なる。

「彩…可愛い…ねぇ…僕の物になってよ…」

“物”という言葉にビクッとしてしまう。



「やだぁ……」



私は力を込めて、橘君から離れようとするが、
ビクともしない。


怖い……怖い…


「好きだよ。彩菜…」


橘君が私の口に近づいてくる。
「やっ…だぁ……」

嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!!!
誰か助けて!!!!!




心の中で、必死に抵抗している時だった。


後、数ミリの所で橘君が動きを止めた。
はぁ…助かった……

心の中で安堵しながら、ゆっくりと目を開く
と、橘君は止まったのではなく
    
    止められていた。


「えっ?」



よく見てみると、橘君の腕は後ろに居る
黒髪の美形に掴まれていた。


「なんだテメェ…邪魔すんなっ!!」



さっきまでの態度が嘘だったかの様に、
橘君は、豹変して美形の腕を振り払おうとし
た瞬間、ピタリと動きを止めた。



「おい。嫌がってんだろ。」



美形は、私までもビビってしまうほど、
低い声で橘君を睨みつけた。


「っ…くそっ!!…」


橘君は、悔しそうに私から手を離し、逃げて
いった…






あっ…あぁーーーーーーーー!!!!!
こわかったアアアアアア!!!


安心したのか、私はそのまま座り込んでしま
った。

今まで抱きしめられるのは、まぁー…
まれにあったけど…
今回のは、ちょっと…すごい……



「おい。大丈夫か?」

美形は、しゃがみこんで聞いてくる。
うわーー、綺麗だなぁーー!
こんな人、うちの学校にいたんだ…

美形は、綺麗な鼻だちにシャープな顎のライ
ンで、思わず見とれてしまった。
もしも、この人が確信犯だったら、
海に沈めてやる!!!

なんて、恩知らずな事を考えていると美形は
首をコテンとかしげた。




くっそォォォォォォォ!!!!!!



私はあまりの綺麗さにおかしくなってしまっ
たようだ。
あぁ…神様は酷いよ…こんなブスに生まれさ
せるなんて…不公平だよ!?どちくしょう!

あまりの悔しさに私は地面に思いっきり
頭突きしてやった。


「お…おい!!大丈夫か!?」


それを見た美形は、さっきとは違う意味で、
私の事を心配してくれている。
だ、大丈夫だ。私は変な人なんかじゃ無い!






「イライラしてる時は、洗い物…だったけ…
 するといいんだぞ…」







それを言うなら、“甘い物”でしょ。




ヤバイ…ヤバイよこの人!!!(汗)
なによ!!洗い物って!!!
絶対、イライラしてる時に洗い物したら、
洋服、ボロボロになるでしょ!!?
北斗の拳並みだよ!!??
『お前はもう、死んでいる』…じゃなくて
『お前はもう、いかれている』だよ!!?





その時の私は、美形からのダメージが強すぎ
て、思わず“ポカンッ”としてしまった。






すると、今の私たちに効果音を付けるかのよう
に、授業の鐘が、まさに“ガーン”という音を
立てて鳴り響いた。





「じゃあな…」




美形は、さっきの空気は無かったかの様に旧校
舎の所へ歩いて行った。



私は、いきなり色んな事が起こって脳がショウ
トし、しばらくそのままぼうっとして動けなか
った。












最後に、ぼうっとした頭によぎったのは、




『美形の向かった旧校舎は、今は使われてなく、
最近は、私が嫌いな不良なんかの巣窟と化して
る。』
       
        

 と言う事だけだった。