オートフォーカス

そんな思いを込めて篤希は加奈を強く抱きしめた。

加奈は首を横に振りそして篤希の方に向き合う。

「篤希、ありがとう。」

涙を流す加奈は今までで一番愛おしく思えた。

「僕も…あの時、会いに来てくれてありがとう。」

篤希の言葉に加奈は何度も首を横に振る。

「今の方が何倍も凄いことだよ。来てくれてありがとう。」

加奈の言葉が、ずっと引っかかっていた篤希の心のしこりを溶かしてくれる。

「…やった。良かった。」

心の底から安心した声が本音と一緒に口から出ていく。

緊張しすぎて手が震えているのか、それともこの真冬の寒さのせいなのかは今は考えないでおこう。

まずはやっと手に入れた大切なものを壊さないように抱きしめる。

「院の試験は終わったの?」

「うん。おかげさまで無事に合格を頂きました。」

「それで。」

だからあと2年は学生のままだという言葉が出てきたのかと加奈は納得した。