「ありがとう。」

そう言い切った仁美の目はいつものようにまっすぐで偽りのないものだった。

彼女の本心だと分かっているからこそ素直に受け取れる。

「今の篤希、真剣すぎてちょっと怖いけどカッコいいと思う。戦う人って感じかな。」

「あはは、負け越しだけどね。」

最後おどけてみせた仁美につられて篤希も笑ってしまった。

戦う人なんてそんな恰好のいいものじゃない、武器も何も持たない丸腰で戦地に向かっているようなものだ。

「それでもいいのよ。私は素敵だと思う。顔付きが全然違うんだもん、モテても変なのに引っかかるんじゃないわよ?」

まるで母親のような口ぶりに篤希も背筋を伸ばして頭を下げる。

これも聞き慣れた仁美節の1つだ。

いつか雅之が言っていた世話焼きおばさんという単語が思い出されて吹き出しそうになった。

「分かりました。」

そう言ってイイコの真似をして頭を下げる。

「応援してる。篤希の進路も、恋愛も。」

満足そうに笑うと仁美は飴を差し出した。