「その長い爪どうにかしろよ!」

「分かる?今回のは上手く出来たと思ってたの!」

秋っぽくしてみたんだけどと嬉しそうにネイルの出来を見せてくる仁美に雅之の人相はますます悪くなる。

彼女の言うように紅葉をイメージしたのか山吹色や朱色などの秋らしい色が小さな枠の中で見事な芸術を作り上げていた。

派手すぎず、シンプルすぎず、センスのいい仁美らしさが出ている綺麗な爪だ。

以前仁美は自分で爪は手入れしているのだと言っていた。

つまりこれは自分でやったということになる、そう考えると余計に見る目もかわってくるのだ。

「本当だ。綺麗だね。」

「でしょ?さすが篤希!」

上機嫌の仁美に微笑みながらたこ焼きを頬張っていると、何とも言えない表情の雅之が目に入った。

お前、本気か?

言いたいことが安易に感じられて思わず篤希は吹き出しそうになる。

「仁美ー!手伝ってー!」

「はーい!」

騒がしい店先から仁美に催促の声がかかった。

いつの間にか行列が出来ている状況に仁美は慌てながら席を立つ。

「じゃ、篤希。午後からも頑張ってね。」

「うん、仁美も。」

篤希の笑みを見て仁美は満足そうに微笑む。