そんなこと今まで言われたこともない。

勝ち誇ったように笑う加奈の背中を見送って必死に乱れた心拍数を整えた。

きっと感情豊かな加奈と過ごすうちにつられるようになってしまったのだ。

楽しい時には笑う、悲しい時には沈む、腹が立った時には嫌そうな顔をする、分かりやすくて羨ましかった。

それでも顔に出過ぎて困ることも多いと彼女は嘆いていたけど、篤希には羨ましかったのだ。

加奈と関わるそんな少しの変化以外は何も変わらない日常が続いていく。

1日が早い、1週間も早い、1ヶ月だって早い。

バイトに明け暮れる日々、空いた時間にサークルに顔を出して、趣味になっているカメラを片手に原付を走らせて郊外へ出た。

たまに加奈と建造物を撮りに行く。

待ち遠しい分、じりじりしながらも約束の日までの時間はあっという間に過ぎていくのだ。

充実した毎日を送り、そしてあっという間にまた学祭の時期がやって来た。