コンプレックスな関係



つまりは、これはデートのお誘いなんだと。


「あっ、その…嫌なら、ここでもいいんだけど…」


私の反応が悪かったんだろうな……。


陽典君は慌てていて、でもそんなトコが私にはとてもくすぐったくて。


「いいよ。私、焼き鳥食べたいな」


そう、答えていた。


例え私の中に居座るのが貴哉であったとしても


陽典君といたら、少しだけ貴哉のことを忘れられるような気がしたんだ。


「焼き鳥?篠井って、意外とオッサンくさい」


くっくっと陽典君が笑うから。


「焼き鳥をバカにするわけ?美味しいんだからね!」


私も自然と笑顔になっていた。


「はいはい。じゃ、篠井オススメのお店は?」
「ここから近いよー?焼き鳥、行っちゃいますか?」
「行っちゃいましょー?」


2人で顔を見合わせて笑い合った。


会計を済ませて店を出ようとした。


「えっ⁉陽典君⁈」


伝票を手にした私の横から、陽典君がそれを抜き取った。


「呼び出したの俺だし。ご馳走させてよ?」
「いや、それは私がちゃんと払うってば」
「いいから。かっこつけさせてよ。…ま、次の焼き鳥は割り勘ね?」


伝票を指に挟んだまま、陽典君はにっこり笑った。