美和を宥めようと伸ばした腕は、美和の手で弾かれた。


「もういい……っ‼ 私、莉生さんと居る時のお兄ちゃんが、すごく好きだった……。でも、お兄ちゃんがそんなだったら…!」
「落ち着け、美和。泣くようなことじゃないだろ?」


美和は、くりっとした大きな瞳に溜まった涙を拭って、俺を睨みつけた。


「逃げてるだけのお兄ちゃんなんて、大っ嫌いっっ‼」
「ぬぁ⁉」


涙いっぱいの瞳で美和は、俺にとって、この世で最も衝撃的な言葉を告げた。


大嫌い………。


美和に嫌われたのか⁉


いやいやいやいや。


美羽の「大嫌い」は昔からだ。


何か気に入らないことがある度に聞いてきた言葉。


今回も、多分それだろう。


それなら明日の朝には、また普通に過ごせるだろう。


俺は、そんな高を括っていた。


この日から、美和は俺と口を聞かなくなった…。


俺史上、最大のピンチだ……。