「莉生。お前、あんな男が好きなのか?」


タクシーの中で、兄貴がぽつりと呟いた。


「………な、んで…」
「見りゃ分かる。俺は兄貴だぞ?けどな。あれはダメだ」
「兄貴は、私が誰を選ぼうと許さないでしょ…」
「そんなことねぇよ。ただ俺以上に莉生を大事に出来る奴じゃなきゃ許さないってだけだ」


……そんな男がいるのかな。


兄貴がどれだけ私を愛してくれてるか、私自身が1番良くわかってる。


兄貴以上に私を大事に出来る奴を見つける頃には、私はおばあちゃんだ。


「シスコン……」


ボソッと呟くと、兄貴に頭をガシガシ撫でられた。


「おぅ。シスコンで何が悪い」


開き直った兄貴の笑顔は、いっそ清々しいくらい爽やかで。


不覚にも。


かっこいい兄貴に溺愛されるのもいいな、とか思ってしまった。