「いやー。ホント、莉生が捕まって良かったよ」


屈託なく笑う貴弥。


「一方的に呼び出した挙句、強制連行しといて何が、良かった、なのよ」


そう。


ほんの1時間程前。


メールで「大事な頼みがある」なんて言うから、急いで来たのに。


目の前には、ででんっ!と積まれたレポート用紙の山。


貴弥が所属するゼミの教授の、論文に必要な資料らしい。


貴弥は帰り掛けに教授から、資料の分類を頼まれた。


その手伝いのためだけに、私は呼び出された。