相手の女を呼び出したのは、チェーン展開してるリーズナブルなカジュアルイタリアン。


家族連れとかも多い店なんだけど、大学生の資金じゃそんなものだろ。


莉生と2人でその店に着くと、相手の女はもう来ていて、莉生を見ると怪訝な顔で俺達を迎えた。


「ねぇ、貴弥ぁ〜?この女誰ぇ〜?って言うかぁ?デートに付いて来るとか、マヂ意味わかんないんですけどぉ〜?空気読めないわけぇ〜?」


空気読めてねぇのはお前だろ。


そう思ったけど、隣の莉生は全く動じる様子もなく、運ばれて来た珈琲を上品な仕草でひと口飲んで、はぁ…と溜息を漏らした。


「あのさ、貴弥。遊ぶのは結構だけど、もう少しまともな頭の相手と遊んでよね。次からは中身も確認しなさいよね」


酷く呆れた様子で、莉生はそう言った。


ここに来て最初のひと言めがソレって……。


改めて、莉生って本当にクールだな、と思った。

「ちょっと⁈なによ、あんた⁉私が馬鹿みたいに言わないでくれる⁈」


名前すら定かでないその女が、キンキンと耳障りの悪い金切り声で文句を言い始めて、だんだんと自分がいかに男にモテるのかという自慢になり、最後は莉生に対する非難になった。


その間、莉生は何も口を挟まずに聞いていた。