「うわっ!」 急に手を離されバランスを崩したその人は、逃げるように教室をでていった。 「芝宮君もひすい君もありがとう。」 「俺は何もしてないけど。」 そう言って、ひすい君は自分の仕事に戻っていった。 …私も戻らないと、そう思ったんけど… 「いや、ざくろは待て。」 とまた、今度は腕をひかれた。 疑問いっぱいの私は多分、凄い阿呆けた顔をしてると思う。 「あの、何か?」 「俺、まだお礼してもらってない……。」 芝宮君は少しうつ向きながら、ボソッと呟いた。