「あ、遅刻しちゃう!」 「ん」 颯太が澄香の自転車のハンドルに手をかけた。 「え、何?」 「後ろ、乗れば?俺漕ぐから」 「え?あっ…」 突然の言葉に澄香が戸惑っていると、颯太はひょいっと澄香を持ち上げ、後ろの荷台に乗せた。 「飛ばすぞ、捕まってろよ」 颯太はそれだけ言って自転車をこぎ始めた。 それから二人はずっと無言だった。 無言で颯太のシャツを掴み 無言で自転車をこいだ。 風が気持ち良い。 背中が温かい。 澄香は 颯太が好きだ。