サワーチェリーパイ

「出た、両手クローズ」
「何それ? 」
「まあ見とけって」


試合は三次の先制攻撃から始まったが、パンチはまだ両手をポケットから出さない。


しかし、顔面に足蹴りを入れられそうになった瞬間、ヒョイっとよけた。

「体柔らかいな」
「おう、ヤツは通称、西工のストレッチキングだから」


その名に恥じず、三次の素早い攻撃を軟体動物の様にクニャクニャとよけていた。


「あいつ、攻撃力はあるのか? 」
「無い、だから相手が疲れるのを待つだけ。時間が掛かるんだよな、いつも。でも三次は、最後まで粘るし、それで一発お見舞いして勝ってる」
「番張るのも大変なんだな、やっぱり」


確かに三次は攻撃をかわされ続け、肩で息をし始めていて疲れを感じさせる。


つい、陽生がしげみの中から叫ぶ。