晴斗が自分の部屋で目覚めると、いつもの様に遅刻ギリギリの時間だった。


急いで派手なTシャツの上へ詰め襟を着て、ヘアワックスで髪の毛を持ち上げ、鏡で顔をチェックし、ヒゲをササっと剃ると朝食も取らずに家を出る。


最低、これだけはしておかなければいけない男子のマナーを一応守るあたりは、多少なりとも女の子にモテたいという下心があるからだろう。


「晴斗! 急ぎなさいよ」
「へいへい」


母の言葉に面倒くさそうに答えるものの、学校は走って10分の場所にあり、いわゆる『近いヤツ程遅刻する』現象で、余裕をかましながらタラタラと歩く。