幼稚園の頃から幼なじみの樹は、元プロ選手だったお母さんの影響でフィギュアスケートをやっていた。


もちろん、プロを目指して。


いつも、練習があって忙しかったけど、近所のリンクへ見に行くのも楽しかったし、それに樹のダンスは見ていて飽きないから、毎日の様に一緒に付き合った。


自分は誘われても決してすべらない、樹の邪魔をしたくないから。


小学生の時は、繊細でキレイだったスピンが、成長と共にだんだんダイナミックになって行った頃……。


リンクに、見慣れないスーツ姿の集団がやって来て見学を始めた。


「中学2年であれだけ出来るんですか、へぇー」
「これまでの受賞経験も豊富ですね、ジュニアでランキング3位」
「欲しい素材ですねぇ」


オヤジ達は口々に樹をほめて、欲しい欲しいと言い合っている。


物じゃないんだぞ、と、少しムッとしたけれど、それでもほめられているのは嬉しい。