サワーチェリーパイ

ただ、皆の前なのでほおにキスをするだけだったが、陽生はそれだけでも顔を赤らめてギュッと晴斗にしがみつく。


「この間はごめん、でも」
「もうそれ以上言わなくてもいい、俺だって色々考えてんだから」


距離は気持ちに影響すると、ハッキリ陽生から告げられたものの、まだあきらめがつかない彼は、何とかしたいという思いで胸が一杯だ。


「This must be the last tune, and everyone must dance with the most favorite girl」
(これが最後の曲だ、皆、一番好きな女の子と踊ってくれ)


無情にも終了時間が迫り、マーティンの声で2人は我に返る。


「最後まで俺と踊ってくれるよな」
「もちろん」


最後の曲は、バラード。


2人は再び固く手をにぎり合い、静かに踊り始める。