サワーチェリーパイ

「そうか、じゃあ頑張れよ」
「うん、来てくれてありがとう」


その時に見送った両親の顔色があまり良くないのに気付いたが、嘘をついた心苦しさから陽生は何も聞かずに見送るだけにした。


1人になると、先ほど話している間に来ていた携帯のメールを確認する。


送信者は三次で、内容は


『晴斗のバカが、お前を
 ダンスパーティーに誘
 うって張り切ってた。
 だから絶対に来いよ』


短い文章だったが、親友を思う彼の気持ちが伝わって来た。


それと同時に、このままでいいのかという疑問がわき上がる。


晴斗に好きだと言われた時、自分はハッキリと返答が出来なかった。


勿論、樹にフラれたばかりというタイミングもあったものの、あんなに頑張っている彼に対して、何の返事も出来ていない状況で、このままズルズルと行ってもいいのだろうか。


陽生は携帯を何度も開け閉めしながら、今、誰を想うのか考えてみる。


樹はダメだからと言って、晴斗の気持ちに応じても良いのだろうか。


それとも、全てを捨てて両親の言う通りに帰郷した方がいいのかを。