涙を拭って、扉を開けると、 「桃莉」 そこに立っていたのは、先生だった。 「先生……家に来るなんて、何年ぶりでしょう。お入り下さい」 「桃莉…今回は辛かっただろう。お母さんと弟の体調はどうだ?」 「母上は今にも倒れそうです。葵は至って元気で……」 「そうか……」 そう言った後、少しの間沈黙が続いた。 「これから、どう暮らして行くのだ?」 「丁度そのことで先生を尋ねようと考えておりました」