絶望した。

騙していた彼…いや、騙されていたことに気づかなかったあたしに。



あたし、桜井 紗奈(サクライ サナ)は捨てられたらしい――。





家に帰ったのはお昼すぎだった。



あれからどうしていいのかわからず、とりあえずホテルを出た。


電車に乗れるお金も財布にはない。

だから、2時間かけて自宅へと向かったのだ。



「ただいまー……」



家に帰ると、家族が誰もいないことに気づき、今日が平日だということを知った。

両親は仕事で、妹は学校に行っているはずだ。



部屋に入ると、一気に溜まっていた疲労が溢れた。


2時間歩き続けたときは何も感じなかった。

ただただ、絶望という言葉だけが頭の中を占めていた。



ベッドに腰かけたとき、クローゼットにかかっている制服が目に入った。


本来ならば、あたしだって学校に行かなければならない。



「今日、卒業式のリハだったっけ……」



なんて思いだしているあたしは、まだ中学生。