「あ、遅かったな」

と、凛。


「あ…ちょっとね」


「ふーん」


「…」

何でも、お見通しですーって顔。



「で、昼間の続き。好きな奴いんの?」



「…今日…彼氏できた」



「はぁ!?誰だよ!?」
どうして、そんなに怒ってるの?



ドン!









痛っ…!




あたしは、気付くと凛に壁に押し付けられていた。
逃げられない…




「なぁ、誰だよ?言えよ!」
凛、声が怖いよ…。
顔が怖いよ…。










「…幹也くん」






「は?意味わかんねぇー」





「…」
どうして、意味わからないの?
本当は、あたしが聞きたいよ…。



「何で付き合った?結局、幹也が好きなのかよ?」


「理由は…試しでもいいから付き合ってって言われて…。謝ったけど、諦めてくれなくて…付き合ったの」



「なんだそれ…。断った理由は?」


「言わなきゃダメなの?言ったら、凛も、好きな人教えてくれる?」


断った理由なんて、言えるわけないじゃん!!

凛が好きだから…なんて、言えないよ…。




「…」


「ほら、凛は言わない。ずるいよ。そんなの!」


「…」



どうして、黙るの?

あたしは、凛が好きなのに…

大好きなのに…


幹也くんを利用してるのわかってる。

だけど、そうでなきゃ…あたしの心は壊れてちゃうよ…。

ねぇ、気付いてよ…。

あたしの気持ち、知らないくせに…。


「幹也のこと、本気で好き?」


本気…じゃないよ。


幹也くん、ごめんね…。



「凛のこと、本気で好き」


って、言えたならどんなに楽だろう。




だけど、言えない。



凛は、あたしのこと好きじゃない…。


千尋のことが好きなんだ。


千尋も、凛が好き。



あたしは邪魔なの。
いらないの。
必要ない子なの。


だったら、あたしはあたしを必要としてくれる人のところに行く。


だって、あたしを必要としてない人のところにいても、辛いだけだから。




「…うん…」

違うのに…

凛が好きなのに…


「…そっか」


「…」

どうして、泣きそうな顔してるの…?