通りから外れたこの場所は、奥まで来ないと見えなくなってる。
紗由に見られたくなかったから。
俺にとっては好都合…。
「松にとって… あの子はどんな存在な訳?」
少しだけ鼻声の梨華子さん。
泣かしちゃってごめん。
でも、中途半端は無理なんだ……
何回考えても、梨華子さんが紗由を上回るとは思えない。
『んー……。
癒し… ですかね。』
付き合ってた時は甘えてた。
紗由なら、何でも受け入れてくれる気がして…―
元々3人きょうだいの末っ子で、兄ちゃん姉ちゃんとは10歳位離れてる。
甘え症は昔から変わってなかったんだ…。
俺とは違って紗由は長女。
年の離れた妹も居て、面倒見が良い方。
きっとアイツの事だから…―
“紗由がゆんちゃんを甘えさせる場所にならなきゃ”
そう感じて頑張ってたんだと思う。
俺が無理させてたんだ。
紗由から笑顔を奪った…――
「いいなぁ…。」
風に乗って梨華子さんの声が聞こえた。
「あたしも松に想われたいよ……。」
俺もこんな顔してるんだろうな。
今の梨華子さんみたいに… 紗由を想っている時、こんな表情なんだろう…。
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