少しの期待と、後悔。
俺と梨華子さんを見て、紗由が妬いてくれるんじゃないか……
俺にも彼女が出来たって安心するかも……
2つの気持ちが交差して、心の中をぐるぐる回る。
俺は怖いんだ。
紗由に… 恋を応援されるのが怖い。
1番望まない現状で。
俺は… 俺は…――。
「松…。あたしが今日来た理由、わかるよね…?」
細い路地に曲がって、壁に押し付けられた。
梨華子さんは真剣な眼差しで…。
俺の両腕を逃がさないように掴んでくる。
『…わかんねぇ。』
「嘘っ!!あたしがずっと松の事好きなの…
気付いてるくせに…。」
最後の方は語尾が小さくなってた。
耳まで真っ赤になった梨華子さん……
伏し目がちにしていた瞳が、俺を誘うように見上げてくる。
梨華子さんを……
特別だと思った事は… ない。
性格は最高に良いし、友達として付き合うにはずっと仲良しでいられると思う。
でも、恋愛対象になるかと言ったら――。
多分ない。
紗由以外と付き合って好きになる事もあるかもしれない。
他の人に自分を見せるのも、俺にとったらかなりの前進。
でも… 今のままじゃ、紗由に戻っちゃうと思う。
紗由が呼んだら、走って側に行きたい。
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