学校の帰り道。


いつものように直哉と2ケツで帰った。



直哉が運転で、俺が後ろ。


体格の良い直哉は、俺を乗せて軽やかにペダルを漕いでいく。





学校を抜けて曲がり角のコンビニに差し掛かった時、キィーという錆びた音と共に自転車が止まった。




『…ってえ。何だよ急に!!』


「祐輔… あれ。」








直哉が指差す方向には、女の人が立ってた。


コンビニの脇で下を向いて、手には携帯をいじってる。




『梨華子さん?!』






後ろから降りて、その人に駆け寄った。


梨華子(リカコ)さんは1個上で俺と直哉とバイトが一緒。

前に、タイミング良く告白された事があった。





俺が紗由と別れた直後。


何もかも知ってるみたいに、梨華子さんは口にしたんだ…。




「もう松の事…好きになってもいいよね?」






こんな事は言いたくないけど……






男を勘違いさせる女。





「あ〜、松!!

良かったぁ、会えて。」


走り寄ってきて、俺の腕に自分の腕を絡ませる。




こういう所が男を惑わせるんだ…。

梨華子さんにとっては普通の事でも、男としての本能が…



そんな風に思ってしまう。






「梨華子さーん。俺も居るんだけど。」


自転車のハンドルに肘を付いて直哉がぼやいた。



梨華子さんは、

「アハハ、ご〜めん!!」




って笑いながら、直哉の頬っぺたを突ついた。




下校時間で、ここは紗由が駅に向かう通り道。


もう… 俺の彼女じゃないけど、誤解されるのは嫌だ。