住宅街の細い道。
真っ直ぐ行った突き当たりに、紗由の家が見えた。
駅から走ってきたせいで、心臓が物凄い音を上げてる。
こめかみに脈打つ音と、額を流れる汗。
ドクドク鳴る胸を押さえて、呼び鈴に手を伸ばした。
「は〜い。
あれ、ゆんちゃん?どうしたの?」
『紗由ママ…
ハァハァ……紗由居る…?』
「部屋に…。
とりあえず入って!」
驚くのも無理ない。
制服は濡れてるし、髪もぐちゃぐちゃ。
雨の雫だか汗なんだか……。
わからない程乱れた格好に、紗由ママは目を丸くしてた。
リビングに通されて、バスタオルを渡された。
何も聞かないで… 全てわかってるみたいに、優しい眼差しをくれる。
「とうとう決めたんだね…。」
『やっぱり……
後悔したくないし。
振られても、気持ち伝えようって思って。』
「…フフッ……
それでこそゆんちゃんだよね!早く私の息子になっちゃいなさい!!」
紗由ママの悪戯っ子な瞳に後押しされる。
ずっと俺の事を見守ってくれた瞳…―
背中をポンって叩かれて、久しぶりに昇る階段に足を掛けた。
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