紗由の彼氏の弘海(ヒロミ)は、バイトで知り合ったらしい。


俺と付き合ってる頃から話しは聞いた事がある。








いつも意地悪ばっかりしてきて、嫌いなタイプだって言ってた。



言ってたのに…―










1度だけ紗由が怒って、弘海を突き飛ばした事があった。


「いい加減にして欲しい…。」




その出来事を聞いた時、電話越しで… 辛そうな声がした。


どんな形であれ、紗由の中で弘海の存在が大きくなってるのを…―




俺は、通り過ぎる感情だと思ってた。


弘海の本当の気持ちも知らないで。









『紗由が嫌ならちゃんと話せよ。

彼氏なら… わかってくれんだろ。』


「う〜ん…―」







頬っぺたを膨らましながら悩む紗由。


そんな顔…、俺の前でするな。



彼氏の事で悩む顔なんて、見せるなよ。








「平澤、俺の席なんだから退け〜。」


タイミングよく直哉が来て、上手い事紗由を退かしてくれた。


これ以上居られたら、苦しくて心が破裂してる所だ。




「祐輔もよくやるね。

別れた彼女の恋愛相談?」


溜め息を吐きながら直哉が席に着いた。

坊主頭を掻きながら、何も入ってないであろう鞄を机に放り投げる。




直哉は俺の気持ちを知っていた…。










まだ…―



紗由が好きな俺の気持ち。




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