別れて数日は… こんなもんなんだって気持ちが大きかった。



あまり実感がなくて、紗由といつでも会える距離に居た事で…。

俺は、重く受け止めてなかったのかもしれない。





同じ学校で、同じクラス。







極めつけは……



紗由からの連絡が切れなかった事。










「ゆんちゃん聞いてる?」



目の前で揺れる紗由の細い指が、俺を空想の世界から引き戻す。


笑うと細くなる瞳は、あの頃と変わらないのに… 今紗由の隣に居るのは。






俺じゃない…―










『聞いてる。

んで、また彼氏と喧嘩したのかよ。』





自分で言葉にして、これほど嫌な事はない。


【彼氏】








紗由には最近彼氏が出来た。


俺と別れてまだ2ヶ月なのに……






女って、気持ちの切り替え早ぇよ…。










「うん…。だって弘海くんね、ゆんちゃんから貰ったぬいぐるみとか捨てろって言うんだよ!

それにゆんちゃんって呼ぶなって!


ヤキモチ妬き過ぎだと思わない?」





ゆんちゃんってのは、紗由が俺を呼ぶ時のあだ名。


本当の名前は、松岡祐輔。



「みんなが祐輔って呼ぶなら紗由だけは違う呼び方にする!!」


そう言って、紗由だけのあだ名になった。



“ゆんちゃん”




お前は知らないよ……


呼ばれる度に、俺の胸が苦しくて悲鳴を上げてた事。






知らねぇじゃん…――