壁に背中をつけて座り込んだ。


日陰になってる場所だけがひんやりとして、熱い体を冷ましていく。



遠くで本令のチャイムが聞こえて、遅刻決定かぁってため息を吐いた…。









「ゆんちゃん…。

紗由… わからない。」



俺の隣に腰を降ろして呟いた。

下に生えてる草を契っては捨てて、契っては捨てて。



悩んでる時の癖。


付き合ってた頃も… よくやってたな。


今日みたいに草の時もあれば、ティッシュを契ってる時もあった。



紗由いわく、

「落ち着くから無意識なんだもん。」


って事らしい。



この癖をやってるって事は、紗由は今悩んでるんだ。




何かはわからない。


でも… 俺の事であって欲しい。






「ゆんちゃんとは別れてるじゃん…。


紗由には関係ないもん。」










“そうだよ”って言っていいのかわからなかった。

今すぐ紗由を抱きしめて、“今でも好きだ”って言っていいのか……。



俺と弘海の板挟みになって、苦しむ姿は見たくない。

紗由は優しいから… どっちにも動けなくて絶対泣くだろ?





自分の所に戻って来て欲しい癖に、やっぱり俺は紗由なんだ。


紗由の…―




笑う顔が見たいんだよ。








『俺…。

本当はさ…』





―ブッブッブッブッ―






会話を邪魔するみたいに鳴り止まない携帯音。

スカートから取り出して、画面を見てる紗由は… 気まずそうに眉をしかめた。