先生の目を盗んで昇降口を抜けた。


体育館に抜ける通路を横切ると、たくさんの部室が並んでる。




陸上、サッカー、バスケット、テニス。


運動部の特権で自分達だけの空間を持てる場所…。







「ちょっ、ゆんちゃん!」


痛がる紗由を引っ張ったまま、部室の後ろに廻った。



雑草が伸びてて、匂いも少し埃臭い。


壁から差す影の場所に紗由を連れて、乱れた呼吸を整えた……








『…ハァッ…ハァ……

ごめ… 痛かった?』





目の前では…、髪の毛を掻き上げて、胸を押さえる紗由の姿。


久しぶりに繋いだ手は…―








相変わらず冷たかった。





『直哉に聞いたかもしんないけど…、昨日の誤解すんなよ。

俺は彼女なんてまだ作る気ないし、あの人とはそんな関係じゃ…』


「でも腕組んでたじゃん!!


ゆんちゃんだって… 嫌がってなかった!
ってゆーかさ、紗由に言い訳する意味がわかんないよ!!」







紗由の頬が高揚してた。


走ったせいなのか、興奮してるせいか…。







どっちにしろ、俺が原因でしかないって事。


紗由を怒らせるのも、泣かせるのも……







2つの感情しか与えてない。


“笑う・喜ぶ”



この感情を与えてるのは、弘海って事か…。


考えてみたら紗由が笑顔で話し掛けてくる時、内容はいつも弘海の事だった。







結局俺じゃ…――





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