昨日の梨華子さんと俺。


紗由に未練がなかったとしても、あんな場面を見せられたら気分は悪いと思う。


ヤキモチを妬いて欲しかっただけ…。

ただ前みたいに…―


紗由の気持ちを向かせたかっただけなんだ。





「祐輔にその気がないのはわかったよ。
でもね…、女って障害がある程本気になるんだよ。


紗由… 昨日何も話さなかった。あたしの予想では、まだ祐輔の事が好きだと思う。」




なっちんの歩幅に合わせて歩き出した。

1つ1つの言葉が胸に刺さる。




なっちんにすら話せない程…、紗由の心は混乱してるのか。


嫌いで別れた訳じゃない…。


寂しさを埋められなくて、心が追い付かなかった。





校門に立つ先生にびっくりされながら、下駄箱に向かった。


太陽の光の中を埃が舞って、昇降口に朝を入れてくる。



きちんと揃えられてある紗由の上履きを確認して、もう1度なっちんの方を振り返った。






『俺…。 紗由と話したいから先に行ってて。』


「……。

わかった…。任せたよ。」





教室に向かう生徒を見送った。

何人も通り過ぎるのに、時間になっても紗由は現れない……






『アイツ何やってんだよ…―。』



予鈴のチャイムが鳴っても来ない事に苛立ちを覚える。


踵で下駄箱を蹴っ飛ばして、校門を見つめた。










見るからに暑そうな空の下……


肩までの髪を揺らして、怠そうに足を引きずってる。






木造の下駄箱から古臭い匂いがして、緊張する心臓を更に速めた…―






.