「奏の生い立ちや過去を知ってるやつがそう居ないってわけだ」
「へぇ…」
蓮斗の言葉に曖昧な返事をする悠太
「ただな…オレたちの中で一番ツラい思いしながら生きてきたのは奏(こいつ)だよ」
「蓮斗は水城の過去を知ってるのか?」
「だいたいは弥生から聞いてる」
「弥生さんから?」
「弥生はオレのイトコで夕紀さんの親友で奏に一番先に関わってきたからな」
「母さんが…」
意外なことを聞いた悠太
確かに夕紀は奏を自分の子供のように接していて時にはひどく心配した時もあった
「そういや…水城って親は?一人暮らししてる様子だけど…」
「………」
「?」
蓮斗は一瞬表情が曇る
悠太は聞いてはこれ以上いけない気がして何も聞くことが出来なかった
「オレの口からは言えないな…。聞くなら弥生か本人に聞きな。……オレはそろそろ行くよ」
「え…」
「奏の様子を見にきただけだし」
そう言って蓮斗は出ていく
悠太は奏の寝顔を見てそっと頭を撫でる
もしかしたら奏はずっと一人だったんじゃないか、とそう考えていた
「お前は…ずっと我慢してきたんじゃないか…」
ポツリと悠太は呟いたのだった


