「“第零地区”って一体なんなんだ?唯一の危険区域なのは良く聞かされてるけど…」
「――――……」
「?」
奏は立ち上がり本棚から一冊の本とファイルを取り出す
表紙が真っ黒なものだ
「なんだそりゃ…」
「第零地区に関する資料」
「ふーん…?」
なぜか曖昧な返事をする
「第零地区は元々他の地区と変わらずちゃんと人が住んでたのよ」
「でもさ、ちゃんと人が住んでたってことは危険区域になって封鎖される前にそこに住んでた人たちは他の地区に移動してきてるんじゃねぇか?」
そう言うとまたコーヒーを一口飲む
「残念だけど誰一人第零地区の人間は居ないわ」
「え…」
「今の第零地区は廃墟寸前の建物があちこちあって綺麗に残ってる建物はそんなにないはずよ。街全体が砂地同然みたいなもんよ」
「そんなに荒れてんのかよ」
「10年前から荒れ地と化してるわよ」
「10年前から…」
奏はファイルを開く
悠太に見やすいようにする
「これは…?ずいぶん綺麗な街じゃん」
「荒れ地になる前の第零地区。15年前くらいの写真かな」
「15年前?」
「えぇ、そうよ」


