隣って…。私の右隣は唯。左隣は、牧原大地。牧原君に借りろってこと?
無理無理。あんまり面識ないし。


牧原君は静かな目で黒板を見ていた。
私がどうしようか悩んでいるのを他所に、授業は進められていく。
「次はこの数式を使って問題を解いてもらう。そうだな、花崎解いてみろ」
当てられないように小さく丸めていた体をゆっくり伸ばし、その場に立つ。
「…。」
「お前数学得意だろ?」


確かに科目の中では一番得意だけど、何で今日に限って当たるの!?
唯を見ても彼女は知らん顔をする。
「う…えっと、その。」
コツン。机に置いていた手に何かが触れる。目線を下げてみるとそこには64ページが開かれた教科書。
トントンとする指先には1つの問題。
誰とは確認せずに私は答えた。
「6x+xy-54」
「なんだ出来るじゃないか。座って良いぞ。」
座りながら一気に緊張が抜けたのか、溜め息がこぼれた。