海斗は、鈴蘭の存在を認めると手を伸ばし始めた。
だから僕は海斗が落ちてしまわないように一生懸命支えた。
「海斗!もう少し!」
こんなに必死な海斗初めて見た。
一生懸命に手を伸ばして、何が何でも手に入れたい、そんな表情。
欲が顔にしっかりと現れていた。
「やった!」
やっと海斗が鈴蘭を引き抜いた。
良かった、これで良かった。
僕も嬉しかった。
達成感、の方が強いだろうか?
何より海斗のほっとしたような、表情をみたら力が抜けた。
「良かった、これでよかった。」
この言葉にどんな意味があるのか、僕はまだ知らない。
この言葉にどんな思いがあるのか、僕はまだ知らない。
分かっていたなら、知っていたなら、きっと止められたのに、僕はまだ子どもだったんだ。

