「妹がね、山に行ったら鈴蘭を持って来て、病室に置きたいからって言うんだ。でもやっぱり春の花だし。」
海斗が悲しそうに話すからないって分かってるのに鈴蘭を一生懸命探したんだ。
ない、ない、ない。
「棗、ないよ。いいんだ、春の花なんだからしょうがないよ」
僕は海斗の言葉を無視して探し続けた。
僕らがいるのは、山の上。
落ちたら一溜まりもない。
わかってるけど、下を見下ろした。
「おい!海斗!」
「なんだよ棗、大きな声だして」
「あったんだよ!鈴蘭!」
「見間違いだろ?」
海斗は疑って近寄ってこない。
見て見ないと嘘か本当かわからないのに
近寄らない海斗を無理矢理連れ出して鈴蘭を見せた。
手を伸ばせば届く位置、少し霜がかかった鈴蘭が咲いていた。
「本当だ、鈴蘭だ!嘘みたい。」

