「ねぇ、棗。僕の妹が入院してるって話したろ?」
「うん。」
海斗の顔はいつしか暗くなり、声も一段と低く感じられた。
「妹はね、心臓が悪いんだ。ドナーが見つかるまで、退院できないし。いつ見つかるかわからない。そんな妹と最後に一緒にきた場所だし、あともう一つ。」
「離婚したお母さんと家族四人最後にきた場所。」
「いいなあ、棗の兄弟は元気だし、両親だってちゃんといるでしょ?」
確かに、両親は健在だし、兄も姉も妹も元気である。
喧嘩ばっかりだし、いなくなればいいとか思うけどやっぱり…家族だから、誰かひとり欠けたり、病気になったり、そんなの嫌だ。

