遠足だった。
あの日、季節外れの遠足に行ったから海斗は死んだんだ。

「ね、棗は麻生山にいった事ある?」

バスの中で海斗はそんな事を聞いて来た。

「ないよ、だって引っ越してきたばかりだし」

「あ、そうだね。ごめん。僕は何度もいった事あるよ。麻生山の頂上はすごく綺麗でさ、鈴蘭の花が咲いてるんだ」

「鈴蘭?」

「そうだよ、可愛くて儚い花なんだ。あ、写真あるよ。ちょっと待ってね」

そう言って海斗は、バックから財布を取り出し、そこから写真を出した。

そうして僕に差し出す。

「ここに写ってるのが鈴蘭だよ」

確かに、可愛くて儚い花だった。

「海斗、妹いるんだね」

「いるよ、一つ下なんだ。」

その写真は、家族写真だった。
鈴蘭と父親、妹が写っていた。