「なあ、慶汰、お前はりりのアイドル好きをどう思う?」

「は? 俺時間ねえんだってば。兄貴、のんびりワックスしてないでさっさとよこせ」

「答えないと返さないもんね」

「あ? いいんじゃねえの? 兄貴のシスコンよりはずっといい」

「シスコンじゃねえ。兄弟愛だ」

「同じじゃねえか。てか、兄貴気持ち悪い。返せ」

「慶汰~、兄ちゃんはまだ終わってない!」


手の中のワックスを奪われた兄貴が慶汰にすがる。


「離せって。俺は忙しいんだ!」

「慶汰がワックス返してくれるまで離さない!」

「これ、もともと俺のだって。ていうか兄貴、本格的に気持ち悪い! ブラコンだけはやめろ!」


兄弟のじゃれあいを目の前にして、あたしは再び溜め息を吐いた。