「兄貴こそ、女の子のアイドルいいと思わないの? たとえばABKとか」

「俺、芸能界には全く興味ないんだわ。今は彼女とりりが一番って感じ?」

「目をキラキラさせんな。気持ち悪い」


じろりと兄貴を睨み付けると、ニヤニヤしていた。


「姉貴~、俺のワックスは? って、兄貴が持ってたのか」


慶汰がリビングに入ってきた。休日はいつもジャージ姿なのに、今日はジーンズを履いていた。


「借りたぜ、慶汰。俺、今日デートなんで」

「俺だってデートだよ。早くよこせよ。時間ねえんだから」

「うそっ、慶汰、彼女いたの?」

「健全な高校生はみんないるよ」

「あたしが不健全みたいな言い方しないでよ」


憎らしいものだ。


慶汰の顔までそっくりなんて、もはや笑うしかない。絶対三人一緒に外で歩きたくない。


何より、そっくりの顔の子供を三人も産んでしまった親を恨む。


しかも、男共は彼女ができて、あたしだけ一向にできないってどういうこと?