翔さんが怖いと思って、翔さんをあんなにしたのはあたしだ。


ここでこう思うのは間違っているかもしれない。頭がおかしいと思われるかもしれない。


それでも、あたしは翔さんが触れた感触が忘れられない。


暖かくて、血の通った翔さんの指。


あんな目をしていても、翔さんの指はそれだったし、怖いと思ってもその指に反応してしまうあたしがいた。


おかしいのかな。


翔さんの息遣い、翔さんの唇、あたしに触れた証。


本当にあたしはどうかしている。


「璃里香……」


なつがあたしの肩を抱く。


あたしは泣いていた。


二人には、翔さんにされたことの恐怖から涙が出ていると見られているだろう。


でも、それが違うと言えるほどの勇気と気力は今のあたしにはなかった。


本当にあたしはばかだ。


翔さんとはもう会えない。


直感でそう思った。


今まで何をしていたんだ、あたしは。


結局、自分のエゴで動いていただけじゃないか。


そう思ったら、涙が余計に溢れて止まらなかった。