あたしの荒い息遣いだけが部屋を満たしていた。


あたしは急いで起き上がり、そのまま玄関を飛び出した。


ここから一刻でも早く抜け出したかった。


翔さんがどんな顔をしていたかなんて見る余裕もなかった。


無意識のまま走って、その足が止まったのは肩を掴まれたからだ。


「璃里香!」


息を弾ませたなつが立っていた。


「……なんで」

「説明は後。家行くで。……その前にこの格好直そうな」


なつがあたしのブラウスのボタンに手をかけたときに初めて、あたしはとんでもない格好で外を走っていたことに気づいた。


さすがのあたしもすごく恥ずかしい。


小声で「ごめん……」と呟くことしかできなかった。


ふっと微笑んだなつはあたしの服を直して、歩くように促した。